「最近の世の中はおかしい!」とか「昔はこんなおかしな事件はなかった!」のような、いわゆる「昔はよかった」系の言葉を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか?私はしょっちゅう聞いてます。主に親から。
しかし、ちょっと待ってほしい。確かに銀行の金利は昔のほうがよかったけど、その他、例えばIT技術の発展、通信インフラの整備、様々なサービスの台頭など、自分が小学生のころと比べても明らかによくなっている点も多々あります。
私の身の回りという狭い世界ですら良くなってるんだから、本当の世界全体の問題、例えば貧困や平均寿命、進学率や自然災害での死亡者数なども実はニュースで報道されないだけで良くなってるんじゃないの?と思ってしまうわけですが、相変わらずユニセフは毎年何万人の子供が~と言って募金を呼び掛けているし、アフリカあたりのイメージは20年以上前から「貧しい国」で固定されており、電気が通ってスマホを持ってるイメージがないわけです。
こんな感じの人々(主に先進国)の持つイメージと実情の乖離具合はなぜ生まれるのか?そして現実を把握することを邪魔する人間の本能について説明されている本がこちら。
著者は世界中の様々な場所で、講演の際に世界の常識に関する3択クイズをされています。極度の貧困にある人の割合は?女子の就学率は?平均寿命は?など。3択なので適当に答えても1/3で正解するはずですが、驚くことに正解率ははるかに下回ったそうです。しかも回答者は医学生や大学教授、ジャーナリストや投資銀行のエリートなど、世界でも間違いなくトップクラスのエリート層。知識も経験も豊富にあるはずの彼らでさえ間違えてしまうのはなぜか?
そんな世界の常識知ってても役に立たないだろ、という人は視野が狭い。まだまだ未開拓の市場で、そこで需要があるものを提供できればすさまじいビジネスとなります。つまり世界の常識がなければとんでもない機会損失となるわけで、商売人ほど詳しくなければいけないわけですね。
さて、本書ではそんな誤解の原因となる人間のやっかいな本能を10に分けて、それを避けるためにはどうすればいいか述べられています。これを読めばなんで年寄りは「昔はよかった」っていうのかがちょっと分かると思います。少なくとも私はちょっとわかった。
本書の言葉で一つ気に入ったものを挙げるとするなら「悪い」と「良くなっている」は両立する、でしょうか。対象が何であれ現状を把握するうえでこれが理解できないと危ないですよね?
マスコミやネットなど様々な情報媒体がある現在、どれが本当でどれが間違いでどれが嘘なのか?その昔、嘘を嘘と見抜けないとネットを使うのは難しいと言われていましたが、ネットに限ったことではありませんね。そんな中何をよりどころにすればいいのか?一度本書を手に取られることをお勧めします。
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